27歳インド人留学生、カナダ移民局の手続き不備で学業も仕事も失う──学費高騰と生活苦に直面する実態

27歳インド人留学生、カナダ移民局の手続き不備で学業も仕事も失う──学費高騰と生活苦に直面する実態

カナダで学ぶ数多くの留学生の中には、制度上の不備や手続き遅延によって学業・生活が深刻に影響を受けるケースがある。2025年8月、オンタリオ州の**コンネストガ・カレッジ(Conestoga College)**に通っていた27歳のインド出身留学生ニキル・シャルマ(Nikhil Sharma)さんが、移民局(IRCC)の突然の対応により学業も仕事も奪われ、大きな社会的議論を呼んでいる。

学签延長申請の突然の撤回

シャルマさんは2024年4月にカナダへ渡り、コンネストガ・カレッジの「マネジメント&リーダーシップ」専攻で学んだ。高い成績でコースを修了した後、翌年5月から溶接コースに進むため学费を全額支払った。しかし、新しい学期が始まってわずか9日目、IRCCから「学签延長申請が撤回された」という通知を受け取った。

通常、学签延長は現行ビザが切れる前に申請すれば審査中も学業継続が認められる。シャルマさんは3月5日に期限前の申請を済ませていたが、5月15日に突然その権利を失った。

IRCCは「学院が10日以内に在籍確認へ回答しなかった」と説明したが、学院側は「期限内に対応済み」と主張。結局、責任の所在は曖昧なままで、シャルマさんは何もできない空白期間に放り込まれた。

学業も就労も禁止、家計は妻と両親頼み

「仕事も勉強もできず、自宅で待つしかない」。シャルマさんは強いストレスを抱えながら、妻の最低賃金収入(約2400カナダドル)とインドの両親からの仕送りで生活を支えている。しかし、毎月の生活費は2000カナダドルを超え、余裕はほとんどない。

「妻が必死に働く姿を見るたびに、自分が無力に感じてしまう」と彼は吐露する。

2024年12月に結婚した妻ハルマンジット・コールさん自身も、就労ビザの審査待ちで不安定な立場にある。二人とも未来が見えない中で、精神的な負担はさらに増している。

学費高騰と大学の対応不足

さらに問題を深刻化させているのが学費の高騰だ。当初支払った8300カナダドルに加え、延期に伴い1100ドル以上の追加費用が発生した。

「私たちは学生ではなく学校にとっての“金づる”に過ぎないのではないか」とシャルマさんは憤る。学院側は「学費は毎年理事会が決定し、延期の場合は新しい学費が適用される」と説明するが、経済的支援を求めたシャルマさんへの返答はなく、サポート体制の不備が浮き彫りになった。

生活を支える唯一の希望は雇用主

留学生としての生活が止まった中、雇用主であるロングス(Longo’s)スーパーは「職は維持する」と伝えてくれている。毎月状況確認の電話が入ることが、彼にとって唯一の救いだ。

「彼らはまだ解雇していない。カナダで唯一、自分を気にかけてくれる存在だ」と語るが、それ以外に生活の見通しは立っていない。

IRCCの処理遅延と不透明さ

IRCCによれば、学生ビザ延長の平均処理期間は170日。今回の再審理申請については再び受理されたが、結果が出るまでさらに数か月待たねばならない。しかも、これまでの経緯は本人に説明されず、メディアを通じて初めて全容を知ったという。

「ずっと暗闇の中で待たされていた」とシャルマさんは振り返る。

カナダ留学生に広がる不安

今回のケースは一人の留学生の不幸にとどまらない。カナダには数十万人の留学生が在籍しており、ビザ審査の遅延や不備は珍しくない。特にインドからの留学生は近年急増しており、制度の遅れや対応の不透明さが国際教育市場におけるカナダの信頼性を揺るがしている。

カナダでの留学は依然として人気が高いが、高額な学費、生活費、そして不安定な移民制度という三重苦が、学生の精神的・経済的な負担を増している。

 

27歳の若者が努力しても制度の不備で未来を奪われる――これは一人の悲劇であると同時に、留学生全体の不安を象徴する出来事である。学費負担、移民局の遅延対応、大学の支援不足、そして生活の不安定さ。これらの課題は、今後カナダに留学を考える多くの若者にとって大きな警鐘となるだろう。

カナダは「留学生に優しい国」としてのイメージを維持したいのであれば、今回のような事例に対し透明性ある説明と迅速な改善を行う必要がある。